熟練したプロフェッショナルの方ほど、ある時ふと気づかれることがあるのではないでしょうか。どれほど技術を磨いても、なお、届かない領域が存在するというものです。

それは例えば：

• こたえのない問いを抱きつづけながらも、目の前の方に寄り添い続ける力
• 「私はまだ何も知らない」という謙虚さで、相手の方の世界に関心を向ける姿勢
• 価値観の違いを受け入れ、そこにこそ学びを見いだす広い視座
• 全体を見渡しながら、より良い方向へと自然に導いていく創造性

こうした力は、一方的な知識の提供や正論だけでは生まれません。まず、ご自身の身体の緊張をほどき、本来の感覚をひらいていく必要があります。

内側が静かに鎮まり、身体から余分な力が抜けて本来の重心を取り戻したとき、そこから自然ににじみ出る「在り方」そのものが、技術や知識以上の深い信頼を生み出します。

皆さまも、その方がそこにいるだけで場が和んだり、なぜか安心できる方との出会いを体験されたことがあるのではないでしょうか。

私自身、看護師として医療現場に立ち続ける中で、そのような"在り方"がどれほど人を支えているかを何度も目にしてきました。

現代は専門性の高度化が進み、知識や技術の正確さが何より重視される風潮があります。けれど、日本の看護には本来、それだけではない深い"根"があったように感じています。それは、病を単なる排除の対象としてではなく、"いのちの営み"として受けとめる視点。その方がどのように生き、どのように在ろうとしていらっしゃるかに心を寄せる、暮らしの延長線にある優しい「看る」という在り方です。

自然治癒力を信じ、その力を促しながら全体を整えていく—「戦う」「克服する」ではなく、「感じ、委ね、ととのえる」という、日本独自の精神性のあらわれだと感じています。その精神性を、私たち自身の身体と感覚に取り戻していくことが、KAMUNAのケアの大切な核となっています。

どれだけ技術が発展しても、人が人に対して心からの安心を感じるのは、「この方がいてくれると、ほっとする」と思えるような"存在感"ではないでしょうか。

その"存在の奥行き"は、スキルや経歴だけでは築かれないと思うようになりました。その方の生き方や身体性、感受性の深さから自然とにじみ出るものです。それが"信頼"や"安心"という、目に見えない大切な価値となって現れます。

けれど、目の前の方々のために日々尽くされる中で、いつの間にかご自身の感覚が鈍くなってしまうことがあります。ケアする側のご自身がまず、自分のからだとこころに還る時間をお届けしたい。それが私自身の体験から痛感し、形にした想いです。